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時代を読む――原田武夫 第52回
王族を失った民族の悲運
私にはお隣の国・韓国に大親友が一人いる。かつて外交官であった時に知り合ったのだが、どういうわけか、すぐに意気投合した。何というのだろうか、「昔からお互いに知っていた」といった感じが最初からしたのだ。東京に在勤していた彼とは実によく飲んだものである。当時まだ独身であった彼は背が高く、ハンサムそのもので、その直後にはやり始めた「韓流スター」を先取りするような人物だ。「二人で飲もう」と言って約束したはずなのに、なぜか彼の傍らには母国からやって来た美女が常に座っており、恥ずかしそうに彼の顏を見ては微笑(ほほえ)んでいたことを懐かしく思い出す。西麻布、麻布十番、そして銀座と、東京の界隈(かいわい)で私たちはよく飲み、よく食べ、よく話した。そしていつしか私は外交官の世界を離れ、彼はソウル、ワシントンと転勤を重ねた。それでも私たちの友情は途切れることがなかった。
 そんな「腹を割って話せる仲」だから、私は一度、知日派官僚の代表格である彼に、はっきりとどう思うのか聞いてみたことがある。ズバリ「天皇陛下についてどう思うか」と聞いたのだ。すると彼は静かにこう、日本語で答えてくれた。
 「正直言うと、うらやましいと思うよ。なぜなら、韓国に王様はいないから。王朝はあったし、戦後も王政復古しようという声があったものの結局実現しなかった。韓国は民主主義の国だ。そのことに僕は誇りを抱いている。でも、やはり王様の存在は大きいと思うんだ」
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