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椀味不只淡 第13回
文・神田裕行(元麻布「かんだ」店主)
Photo Masahiro Goda
神田裕行の椀五十選 第13回
日本料理の椀の世界観は「淡」であるべきだと思う。
 そう言いつつも、ついついより美お味いしく、もっと美味しく、と思う自分がいることも確かだ。
 「美味しい」の価値観は人により、年齢により、あるいは生まれた土地や国によってさまざまだが、昨今は日本の美味しいの価値観が西洋化しつつあると感じているのは私だけだろうか?
 初鰹を喜んだ江戸っ子は、秋に脂をたっぷりまとって帰ってくる“戻り鰹"を知らなかったのだろうか?“トロ"を捨て、“赤身"のマグロを好んだというのは江戸の都市伝説だろうか? 昭和の酒飲みが、二級酒を愛し、特級を嫌ったのは、単にやせがまんだったのだろうか?
 美味しいは、「美しい味」と書く。旨みの量が絶対ではなく、甘みや脂あぶら
味みに頼らない、きれいな味わいを“美味しい"と定義づけ、昔の日本人はそういう味を愛したのではないだろうか。
 スッポンの旬は冬らしい。いや、冬である。
 冬眠に備えて、脂を蓄えた“丸"を鍋で囲むのにも、冬が好ましいことは確かだ。しかし“椀"にするなら、私はあえて初夏のそれを選んでみる。
 冬の“丸"には、マグロのトロのような脂の旨さが確かにあるが、初夏のそれには赤身のような、きれいな酸と健康的なタンパク質の旨みを感じるからだ。
 脂が浮かない淡泊なスープゆえに、しょうゆやショウガを必要とせず、塩だけで味を調えることができるところも、実に好ましいと思う。ここがまた、旬ではない時期のスッポンの良さなのだ。
(上)空豆と芝海老のしんじょ
昨年まではこのしんじょに車海老を使っていたが、今年から芝海老に。すると、甘味がおだやかになり、空豆と海老の歯応えがより明確になった。

(下)スッポンと山ウド椀
山ウドを使って椀を作りたいと思った時、その相手としてふさわしいのはスッポンだ。旬を迎えた山ウドのしっかりした味には、じっくり煮込んだスッポンを合わせる。
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