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食語の心 第33回
作家 柏井壽
仕事上、旅に出ることが多い。同行者がいることもあるが、多くはひとり旅になる。当然のことながら、ひとり旅の食事は、ひとり飯になる。
 ひとり飯というものは、慣れないとなかなか難しい。ランチタイムはさほどでもないが、外食ディナーとなると、少しばかり気構えが必要になってくる。
 通常、夜の外食というものは、複数客を標準としている。カウンター席メインの居酒屋を除けば、2人以上の客がスタンダード。テーブル席なら2人席、4人席が標準仕様だし、座敷席なら数人一組を想定して、設けられている。
 そこへひとり客である。店側にとっては如何(いか)にも効率が悪い。かといって、昼ならともかく、夜に相席をさせるわけにもいかない。が、空席のままよりはマシか。というわけで渋々受け入れてもらえる、というのが、ひとり飯の哀かなしい現実である。 一番気楽なのが居酒屋なのは言うまでもないことで、洋食ならバルになるだろうか。
 だが、その繰り返しでは必ず飽きてくる。何か違うものを食べたいと思っても、夜のひとり飯に向く店は少ない。カウンターがメインの鮨(すし)屋なら問題ないが、懐具合を考えれば、鮨屋の頻度は決して高くならない。
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