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食語の心 第60回
作家 柏井壽
進化する旅館料理
ずいぶん前のことになるが、この連載で、日本旅館の料理のことを書いた。
 古くは、お膳にずらりと料理を並べ、どこにでもあるような刺し身の盛り合わせから、冷めた天ぷら、固形燃料で温める小鍋など、どこの旅館でも同じような料理が並ぶ時代が長く続き、そのあとは一転して、京懐石をまねた高級路線へと移る。
 それは、団体客中心の客層から、家族や夫婦、カップル客などの個人客グループへと変わったこととシンクロしている。
 つまり日本旅館の料理は、客層の変化につれて変わってきたわけで、そのあたりがホテルとの違いだ。
 ホテルのレストランというものは、基本的に外来の客すべてに門戸が開かれていて、宿泊とは切り離されている。
 それに比べて日本旅館は、ランチタイム以外は、たとえ食事処どころがあったとしても、宿泊客専用となるのが通例だ。
 さまざまに議論はあるものの、多くが一泊二食体系で料金設定をしている、日本旅館独自のシステムが、宿の料理形態を決めているのだ。
 旅館の料理が客層の変化につれて変わってきた所以(ゆえん)である。
 では、第6回に書いて以降、4年ほどの時間を経て、日本旅館の客層は変化したのか。
 団体客から個人客へという流れに変わりはないが、さらなる変化を遂げているというのが、多くの一致した見方だ。
 夫婦を主としたカップル客から、母と娘、女子会という名の女性グループなど、女性だけの客が増えてきたという。女性の社会進出を考えれば当然のことだと思うが、最も大きな変化は、一人客の増加だと多くが口をそろえる。
 かつては忌み嫌われたと言っても過言ではないほど、敬して遠ざけられてきた一人客を、多くの日本旅館が受け入れるようになったため、一人で旅館に泊まる客が急増しているという。
 となると、当然の結果として、旅館の料理も変化せざるを得ない。
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