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食語の心 第69回
作家 柏井壽
旅と食の素敵な関係2
書く仕事のほとんどすべてが日本国内の話なので、長く海外旅行から遠ざかっていた。
 もともと旅好きになったきっかけはヨーロッパ旅行であって、大学に入った年から3年間は、毎年夏休みのほぼすべてを費やして、ヨーロッパ中を旅してまわった。
 旅とはなんとエキサイティングなのだろう。異空間で過ごす非日常は、なぜこんなに魅力的なのか。そう思ったことが僕を旅好きにさせた。
 3年間で130日ほど掛けてヨーロッパを巡って気付いたのは、あまりにも僕が日本を知らないことだった。異国の人たちから日本のことを尋ねられて、答えられないことがあまりに多すぎた結果、そののちは日本の隅々までを訪ね歩くことに専念してきた。
 ヨーロッパもたしかに面白かったが、日本各地の素晴らしさは、それをも凌駕(りょうが)し、日本を旅することに夢中になり、気が付けば40年余りのあいだ、一度もヨーロッパの土を踏むことなく過ごしていた。
 そうだ。フランスに行こう。
 突然そう思い立って、家人を伴って8日間という駆け足ではあるが、南から北へとフランスを巡った。
 学生の貧乏旅行だった約40年前とは比べものにならないほど、今回は優雅な旅だったが、とりわけ食に関しては当時とは大きく印象が違った。
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