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「フランス」はダブルソールが108,000円(右)、シングルソールが86,400円(左)。いずれも木製シューズキーパーと布のシューズバッグがセットになっている。靴底にはバスタンの刻印。お手入れにはダルモアを使った「モルトドレッシング」が最適だ。
フランスを纏う墨田区ブランドの靴
Photo Takehiro Hiramatsu(digni)
Text Junko Chiba
東京・向島に根をおろして約半世紀。ヒロカワ製靴渾身の唯一無二のブランド「スコッチグレイン」から、誕生40周年を迎えた今年、記念モデルが登場した。「ベガノ」に続いて世に送り出された「フランス」は、その名の通り、全てフランスの厳選された素材が使用されている。同社の素材への飽くなき追求が具現化された逸品だ。
ヒロカワ製靴2代目、廣川雅一社長がフランスに渡ったのは一昨年のこと。かねてから交流のある、フレンチ・トラッドの代表的な靴ブランド、J・M・ウエストンの工場を見学することが主な目的だった。とりわけ廣川社長の興味を引いたのは、ウエストン社が所有するタンナー(革なめし業者)、バスタンの“なめし現場"である。
「バスタンの靴底は硬いことで知られています。“伝統的な植物なめし法"を1870年代に受け継ぎ、その技法を今日に伝える、フランスでも唯一のタンナーです。方法はまず、ピット槽でオークの樹皮から抽出したタンニンをなめし剤にして、牛原皮をおよそ3カ月かけてじっくりなめします。その後、なめされた革をオークのチップとサンドイッチ状に重ね、3mくらいの地中に埋めるんです。そこで地中の一定した温度で、さらに1年かけて熟成させます。それを3カ月かけて乾かして仕上げるのです。つまり全工程に要する期間は1年半! だいたい3カ月で完成する今の手法と違って、化学が発達する前の自然から人間が得た知恵で革をなめしている、と感じます。もちろんクオリティーは最高級。なじむのに少々時間はかかりますが、減りにくい。“一生もの"に近い靴底です。そういうガンコなところのある素材ゆえにいとおしさもひとしおです」
 新モデル「フランス」では、靴底と中底にこのバスタンの革が使われている。加えて、アッパーの革はデュプイ社製。すでにヒロカワ製靴が採用しているアノネイ社と並ぶ、フレンチカーフの代表格だ。今回使用した「ニュービンテージ」というカーフは、表面にワックスがふんだんにのっており、モルトドレッシングによる磨きや日々のお手入れにより、一層光沢が増す。「マニア垂涎(すいぜん)のデュプイを堪能できる」革だという。
 こういった素材へのこだわりは、ヒロカワ製靴の真骨頂。国境を越えて良質な素材を求める姿勢の表れでもある。「コスト的には3倍になるけれど、これだけすばらしい材料を使わせてもらえるのは、我々も評価されているのかな。靴メーカー冥利(みょうり)に尽きます」と喜色満面の廣川社長である。
 もちろんスコッチグレイン本来の魅力は、「フランス」にも引き継がれている。例えばすくい縫いとだし縫いの2工程から成るグッドイヤーウェルト製法。ステッチの美しさや疲れにくい靴底の3層構造などが、この製法ならではの品質の高さを象徴する。また創業以来受け継がれている独自の「木型」は、快適に歩けるように接地面に独特なひねりを施し、つま先や甲周りは履き心地の良さとデザイン性が重視されている。
「フランス」は、つま先が丸く特異な存在感を示すレザーのダブルソールと、ヒールが小さくドレッシーに仕上げたシングルソールの2タイプ。黒一色で展開する。
「初回は銀座本店で各40足を販売します。その後も製造を切らさず、いずれ定番化させたいと思っています」と廣川社長。とくに素材へのこだわりはとどまることなく、次代につなげたい考えだ。

●スコッチグレイン銀座本店 TEL03-3543-4192
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