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こが・えりこ
1980年 福岡県生まれ。上智大学文学部仏文学科卒業後、フリーランスの写真家として活動。2009年からは和歌山県の高野山へ通い新作撮影を続ける。主な著作に『浅草善哉』などがある。BS-TBSの「おんな酒場放浪記」に出演中。
大学も卒業が近づき、写真家のアシスタントを始めた当時、師匠に寿司屋へ連れて行ってもらい、そこで日本酒のおいしさに目覚めた。「何よりも純米酒の辛口が好き」なのは、飲み口がすっきりしていて料理に合うからだ。
 100歳近い、父方と母方の祖母がそろいもそろって酒豪。両親は下戸、兄はビール1杯で眠くなる家系。完全な隔世遺伝だ。
 取材当日も、「朝から冷やしている山口県のお酒『獺祭』を飲むんですよ」と、まるで最愛の人を思い浮かべているような笑顔になる。そんな彼女を見ているだけで、心の底から「日本酒が好きだ」という思いが伝わってくる。
 日本酒の消費量では日本一の新潟県。かの地の酒場では必ず、無理な飲み方をしないようにと「和らぎ水」が供されるが、日本酒をたしなむ際のそんな作法にも素直に感動する。
 「日本酒の奥深さに圧倒されます。我が子のごとく大切に作られるお米のエッセンスそのもの、それを頂けるありがたさ。日本人の体に合うし、何より和食に合いますよね」
 自らが〝酒蔵〞と呼ぶ自宅のスペースには、スペイン産のオーガニックワイン、お疲れ一杯のビール、寝酒用のウイスキー、そして偏愛する日本酒が何本も常備されている。番組ではディープな酒場を訪ね歩く日々だが、意外にも「家飲み」が多く、器への美意識も忘れない。
 「片口とお猪口にはこだわっています。その日の気分でガラス、焼き物と器の素材、大きさも替えるし、飲みながら、途中で替えたりもします。焼き締めだったらお酒がより透明に見えてきれいだし、夏ならガラス素材がいいし、熱燗だったらやっぱり小さいお猪口の気分ですね」
 味や香りに感覚を研ぎ澄ませるためか、酒を飲むときには味わい深げに目を閉じてしまう。番組を見た人や制作スタッフなど、他人に指摘されるまで本人は気付かず、ごく自然にやっているのだそう。
 「本業は写真家なので、うまいことを言おうとしてもぼろが出る。素直に味を楽しむことに集中する結果、そうなっているのでしょうね(笑)」
 「命の水」。あなたにとって日本酒とはの問いに間髪入れず答える。インタビュー中に何度となく繰り返された、目を細めながらの合掌。多くの人の手を経て生まれる酒と向き合うとき、造り手の情熱や大地の恵みへの深い感謝と喜びが、そうさせていた。
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