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(左)高さ142mの照葉大吊橋から下を見て。橋の下は渓流・綾南川(本庄川)。綾町の中心部はこの綾南川と綾北川、二つの川に挟まれた扇状地だ。河原には大きな岩や石がゴロゴロしている。(右上)関西以西、四国・九州・沖縄の海岸や沿海の山地に自生するイヌビワ。果実はビワに似ているがイチジク属。イチジクに比べると味は劣るものの、黒く熟すと生食でもジャムに加工してもおいしい。(右下)植物多様性が高い照葉樹林では、同じ空間にどれだけの生物が暮らせるかがカギ。森が成熟すれば、こうした木に着生するラン科植物が増えてくる。他にもシダやコケといった植物が着生したり共生したりしている。
千古不易の照葉樹林
宮崎県・綾の森
Photo Masahiro Goda Text Junko Chiba
縄文の昔、西南日本にはうっそうとした照葉樹林が広がっていた。文明の進展とともに暮らしに必要な材木を得るために木々が伐採され、あるいは焼き払われた後に水田がつくられ、しだいに姿を消したが、綾町にはその「失われた照葉樹林」が広大な規模で残っている。この「奇跡」の裏で続けられてきた地域づくりの歩みをたどりながら、人々とともに生きる照葉樹林の森を探索した。
台風12号が宮崎県を直撃した朝、綾の森へ向かった。歩けるのかと不安がよぎったが、案内人の河野耕三氏(綾町役場・照葉樹林文化推進専門監)は意に介さない。「森の中が真っ暗でないといいんだけど」と、撮影のための光のことだけを心配し、でも「じきに晴れてきますよ」と明るく言って、車に乗り込んだ。
 走るうちに本当に雨は小降りになり、それと比例して、まだ見ぬ森へのワクワク感が高まったのだった。

千尋の滝
 最初の〝行き先〞は千せん尋ぴろの滝。照葉樹林が育む豊かな水の象徴だ。「すぐそこ」と言われたが、けっこう急でハードな下りだった。ただ不思議と、ぬかるんでいない。それだけ森はスポンジのように雨を吸収する土壌浸透力が高いのだろう。
 「ここには川沿いによく生えるタニワタリノキやカンザブロウノキがあります。あと大型のシダとか、雨が降るとキノコも出てきますね」
 谷から上がって、改めて向こう岸に広がる森を眺める。河野氏によると、かつてのトロッコ道から下の辺りが、150〜200年の原生林で、木々が太くクネクネした枝を広げる原始的な姿をとどめる点が特徴的。やがて樹木にくっついて生活する着生植物、特にランが増えるという。
 綾の森には確認されているだけで、149科944種の野生植物が自生。内、照葉樹林構成種は263種で、高木においては日本全土で見られる25種中24種が生育しているそうだ。河野氏の口からポンポン飛び出す植物の名前に、早くも頭がクラクラしそうだが、まだまだ序の口である。
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