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はらだ・たけお
元外交官。原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。情報リテラシー教育を多方面に展開。講演・執筆活動、企業研修などで活躍。www.haradatakeo.com
しかし、である。欧州中央銀行が量的緩和に踏み切ったのを見て、サマーズ元米財務長官はこんなコメントを出したのである。
「このままいくと米国はデフレに転落する危険性がある。FRBは金利引き上げを待つべきだ」――あのモントリオールでの濁声は何だったのかと大笑いしてしまった。要するに彼ら米欧の統治エリートたちは大西洋を挟んでボールを投げ合い、マーケットを揺さぶっているだけなのだ。太陽活動の明らかな異変を起点として、北半球では夏場の極端な暑さの裏側で秋冬の寒冷化が激しくなっている。これが人々の免疫力を蝕み(むしばみ)、デフレ縮小化が加速度的に進んでいる。ところが米欧の統治エリートは何としてでも、従来同様にむき出しの力をもってこれを抑え込もうとしているのである。自分で作ったルールを次々に破っては量的緩和に飛び込んでいるのはそのせいだ。逆に言えば「ただそれだけのこと」なのである。
 彼ら米欧の統治エリートの頭の中にあることはただ一つ。「自然(じねん)は必ず力でねじ伏せることができるはず」という確信だ。これこそが西洋という文明の根幹に横たわっているものである。そしてこのように力をもって覇権を握ろうとすることを古来、東洋では「仁侠(にんきょう)」と呼んできた。
 だが最後に仁侠は必ず滅び去ることになる。強烈に作用を加えれば、同じだけの反作用が生じるという「復元力の原則」ではじき返されるからだ。したがって米欧による「量的緩和」の結末も目に見えているのである。徹底した破綻、いや文明としての西洋そのものの「崩壊」だ。
 その瞬間、全く違う原理へと世界は切り替わるのである。自然(じねん)への作用ではなく、それとの合一化を図る東洋、そして我が国古来のやり方である。このことを「礼」と呼ぶ。あるがままの世界をまずは受け入れることから始まるこの「礼」の世界はデフレ基調となる。
 今起きていることは結局、「仁侠」の西洋から「礼」の東洋への転換だというわけなのだ。
 肝心なのは、このあまりにも重大な原理転換を当の私たち日本人自身がリードしていけるかどうかである。その意味で「仁侠」から「礼」へと向かう今、民族としての私たち日本人の本当の記憶力と実行力が問われている。
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