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女性を主人公にしたワケ
タイトルからわかるように、『村上海賊の娘』は女性が主人公である。和田氏にはもともと「海賊と対極にある女性を主人公にしたい」という考えがあった。ただし架空の人物ではつまらない。「村上武吉(たけよし)という海賊の傑物に実の娘がいたら書こう」と思い、いろんな系図を探った。ところが、どの系図にも「養女」しか出てこない。「いなかったのかぁ」と諦めかけたその時、山内教授の本にあった『萩藩譜録』の中に「女」の文字を見つけたのだ。「もし見つかっていなかったら、武吉の息子の元吉(もとよし)を主人公にして、信長軍の真鍋七五三兵衛(しめのひょうえ)と戦う“男対男の物語"にしたと思う」と振り返る。
 そうしてたどり着いた主人公、景(きょう)の設定がまた意表を突く。なにしろ「悍婦(かんぷ)にして醜女(しこめ)。嫁の貰い手がない当年二〇歳」というのだ。小説の中でもさんざん「醜女呼ばわり」される景だが、実は西洋風の現代的美人である。「400年も経てば、美に対する物差しは変わるというところを楽しんでほしかった」と言う。
 「現代でも、日本でそれほどモテない女性がアメリカに行ったら急にモテちゃうとか、あるじゃないですか。美醜の感覚って、時代や地域によって全然違う。女性にとってはある種夢のある話ですよね。それに景には実は、僕が抱く女性の理想型を投影しているんです。欲望にまっすぐで正直、でも情はある、みたいな。あと後半は合戦シーンが中心になるので、前半でモテたい一心で、自分を美人だと認めてくれる大坂に行っちゃうとか、景を軽々しくておバカな感じにしたかった面もあります」

小説を貫く「和田スタイル」
 景のみならず登場人物はみんな実に個性的で、躍動感あふれる言動で読者を楽しませてくれる。氏が「歴史を俯瞰して捉えるのでなく、その現場にいたらどんな雰囲気なのかを考えて書くことで村上海賊が身近に感じられるよう心掛けている」からだろう。また特筆すべきは、文章が非常に「映像的」なこと。「一度シナリオに起こしてから、それを拠(よ)り所に文章を書く」という和田氏独特のスタイルの賜たまものと言うべきか。文字から情景がリアルに思い描けるのだ。
 「史実の裏付けを得て物語を紡いでいくことと、小説の舞台に立った時の現場感を、大切にしています。それをどう小説に生かしていくかは、司馬遼太郎さんと海音寺潮五郎さんから多くを学びました」と和田氏。今後も、大好きな合戦を軸に“戦国もの"を書いていきたい考えだ。
 最後に、村上海賊の息づかいが聞こえるポイントを挙げてもらった。
 「小さな島が丸ごと海城だった能島城跡や甘崎(あまさき)城跡などがいいですね。歴史のロマンを感じられるし、村上海賊が瀬戸内のあらゆる島を要塞(ようさい)化し、ポイントを押さえていたことが実感できます。あとは淡路島から望む大阪の夜景でしょうか。大阪市街の光が、木津川合戦の時にかがり火を燃やして並んでいた千艘(そう)の船の様と重なるようで、面白いですよ」
――村上海賊をテーマに瀬戸内の旅を楽しんではいかがだろう。
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