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コントロールされた食事と運動が優秀なメリノ羊を育てる。
メリノウールと人間の知られざるドラマ
Photo Ermenegildo Zegna
Text Maki Shibata
全羊毛の4割を占める、メリノウール。最高級スーツからカーペットまで、世界中で使われる汎用性こそ、メリノ羊の優秀さの表れ。身近なのに、知られていない羊の謎を、ウール博士こと、大内輝雄氏に聞いた。

2000年の歴史が作りあげた、衣料用のメリノウール

 世界に3000種を数える羊の中で、最高の品質を誇り、世界でもっとも多く衣料用の羊毛に使われるメリノ羊。特に世界最大の羊毛生産国であるオーストラリアでは、生産量の7割以上をメリノウールが占めている。その魅力である、毛の細さや縮れ、白さを生かして、あらゆるファッションアイテムに応用される。
 メリノ羊が生まれたのは、牧羊国家ともいうべき12世紀のスペイン。王侯貴族や僧侶は羊を占有し、紡ぎやすい羊毛を得るため、品種改良に励んだ。スペインの国王は、羊毛からの莫大な国家収入を得るため、メリノ羊の輸出を禁止。羊を国外へ持ち出せば、死罪に断じた。その後、ナポレオンがスペインを征服し、羊を国際競売にかけたことで、独占状態だったメリノ羊が世界へ広がっていく。中でも南アフリカやオーストラリア、ニュージーランドは、乾燥した気候や、草が生える広大な国土など、好条件が揃い、現在では、屈指のメリノ羊の産地となった。
 メリノウールが、なぜこれほど世界に広まったのか。それは、ウールの特質にも言及される。羊の毛は天然パーマのように縮れている。メリノウールのように毛が細ければ細いほど、このらせん状の縮れが大きい。この縮れの中の空気が、断熱層の役割を果たす。寒い時は暖かい空気を逃さないため、保温性が高く、夏は外気を遮るため涼しい。さらに毛の表面はウロコ状になっていて、温度に応じて開いたり閉じたり、自然に湿気の吸収と放出を繰り返すのだ。ウールの靴下が蒸れずに快適な履き心地をキープできるのは、このためである。まさに“自然のエアコン"とも言える。

メリノ羊は、毛の細さでランキングされる

 メリノ羊の優劣は、ずばり毛の細さで決まる。毛が細くなればなるほど、肌触りがしなやかで独特の弾力性と艶を帯びてくる。平均は、約20ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリ)。それよりも細い18・5〜
16ミクロンをスーパー・ファイン・メリノウール、16ミクロンよりも細くなると、ウルトラ・ファイン・メリノウールと呼ばれる。毛の細さによって用途は様々だ。18・5ミクロンより細ければ、スーツやコート、ドレス、22〜25ミクロンは、ざっくりとしたセーターやカーディガン、38〜40ミクロンは、太さと強さを生かしてカーペットなどに使われる。
 毛の細さの追求が、メリノ羊の歴史そのものであり、熾烈な戦いの火種になることもある。1989年のバブル絶頂期、オーストラリア・タスマニアの羊毛オークションで、イタリアと日本の繊維メーカーが競い合い、価格が高騰。スーパー・ファイン・ウール1俵(100㎏・約40頭分)に30万ドル(3000万円)の値がつき、日本のメーカーが落札。社長は会見で思わず「欲しかったロールス・ロイスと同価格」と呟いたそうだ。
 さらに現在では、ウルトラ・ファイン・メリノウールの生産を奨励するために、服地メーカーとしても知られる伊ブランド「エルメネジルド ゼニア」や「ロロ・ピアーナ」は、毎年、毛の細さを競い合う競技会を主催。今年6月の「ゼニア・ウール・アワード」では、オーストラリアの牧場が出品した、10・5ミクロンの羊毛が優勝を飾った。
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