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食語の心 第27回
作家 柏井壽
〈プロ〉。言うまでもなくプロフェッショナルの略で、そのことで生計を立てていることを言う。あるいはその道を極め、他を圧する技倆、もしくは知識を持つことを言う。
 その、どちらにも当てはまらない人たちがメディアの中で〈プロ〉と呼ばれ、もしくは自ら名乗り、誰もそのことに異を唱えない。それは食の世界でも顕著だ。
 関西ローカルで恐縮なのだが、人気情報番組で、お奨めグルメを紹介する〈本日のオススメ3〉というコーナーがあって、人気を呼んでいるらしく、長く続いている。このコーナーのサブタイトルには〈プロが教える……〉と付いている。
 はて、どんなプロが登場するのかといえば、お笑いタレントや人気歌手、アスリートたち。
 友だちが経営する店だとか、近所の行きつけの店、仕事先で偶然食べた菓子など。自分の好みを三つ紹介し、たいていは四つめとして、自分の舞台や番組の宣伝をする。つまりは自分のPRをする前フリとして、お奨めを挙げているだけのこと。
 いちいち目くじら立てるのも大人げないと思わぬでもないが、このコーナーで紹介された店は、あっという間に人気店となり、行列の絶えない店になるというのだから、黙って見過ごすわけにはいかない。〈プロ〉という言葉を安易に使うから、視聴者はその情報を正しいと信じ込んでしまう。もしもこのタイトルに〈プロが教える〉というコピーがなければ、信頼性は薄らいだに違いない。ただのお笑いタレントの、いったいどこが〈プロ〉なのか。
 そしてこのコーナーには、人気ブロガーもレギュラーで登場する。何千軒ランチを食べ歩いた〈プロ〉などと紹介され、したり顔で店紹介をするのだが、どうも近頃は、この〈数〉で判断されることが多い。数より質だと思うのだが、千軒のラーメン屋を食べ歩いた、ただそれだけで賞賛され、〈プロ〉と呼ばれてしまう。
 これはどうやら食の分野に限られた現象のようで、たとえば書評家が何千冊読んだとかを自慢している話など聞いたことはないし、映画評論家しかり。数を誇るのではなく、どんな映画を観て、どう評論するかで、プロと呼ばれるに至るかどうかが決まる。
 
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