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けやき坂をめぐるインテリジェンス
Photo Masahiro Goda Text Koko Shinoda
外交ジャーナリスト・作家 手嶋龍一
「あなたの小説を読んでいると、六本木のけやき坂ですれ違うイギリス人男性が全て英国諜報部員に見えてしまいます。プロと堅気を見分ける方法を教えて――。“知りたがり屋のジョージア"と名乗る、若い女性とみられる読者から、そんな手紙をもらいましてね(笑)」
 六本木・けやき坂のTSUTAYA TOKYO ROPPONGIのスターバックスで手嶋龍一氏はおもむろにこう語り出した。
「“知りたがり屋のジョージア"は、六本木ヒルズの会社に勤め、けやき坂のル ショコラ ドゥ アッシュのカフェが好きな、知的な若い女性と見立てて、返事をしたためました。その英国人が聞き上手で品がよく、ごく普通のビジネスマンに見えたら要注意ですとね」
 しかし、そんな答えではジョージアはご不満だった様子で、お叱りの手紙をもらってしまったという。
「英国の男性が、その筋の人らしいと思ったら、彼の背広の内側をそれとなくのぞいてみるといい。テーラーはもとより自分のネームも入っていなければ、インテリジェンス組織の人かもしれないと思ったほうがいいと回答して、ようやく納得してもらいました(笑)」
 このエピソードは、世界29の都市で生起する政治家やスパイたちの素顔をルポルタージュした『インテリジェンスの賢者たち』(新潮文庫)に採録されている。おしゃれで楽しいこの作品に登場するただ一つのニッポンの街は六本木・けやき坂だ。手嶋氏と交流のあった実在のインテリジェンス・オフィサーたちの生態がスケッチされている。
 外資企業が多く入居している六本木ヒルズは、リーマン・ショックで数が減ったものの、今も米国系が断然多い。だが、英国系の企業は金融とエネルギー関係の大手が数えるばかりだ。それゆえだろう。けやき坂で見かけるビジネススーツの外国人も米国系が大半を占めている。
「以前から六本木は米国人好みの街かもしれませんね。星条旗通りと呼ばれる界隈には米軍の新聞、スターズ&ストライプスがあり、天現寺には米軍将校のための山王ホテルがあります。彼らの中にCIA(Central Intelligence Agency)やDIA(Defense Intelligence Agency)の関係者がいても不思議はありません。でも英国のインテリジェンスの人たちに比べて、米国のエスピオナージ活動はどうにも単純で、面白みに欠ける。彼らがたむろするスポットといえば、アメリカン・クラブ周辺から東京タワー周辺に点在するバー、東麻布のバーバー、バミューダ・ライムでもよく見かけます」
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